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by 西垣 佐人江
朝5時15分、辺りはまだ暗い中15分遅れでチャウンダ行きのバスがけたたましいエンジン音を鳴らしながら出発した。
今日から水祭り。5日ある休みのうち3日間をゆっくりビーチで過ごすためヤンゴンを離れた。しかし行きのバスを見て分かったのだが、チャウンダに着くまでに疲れ果ててしまいそうである。私達はエアコンバスのチケットを購入したがどこをどう見てもエアコンは付いていない。チケットにも確かにエアコンとでかでかと書かれてある。ここは窓を開けて自然の風を取り入れるしか方法はなさそうだ。しかしバスの中は人だらけである。通路にも押し込み、すし詰め状態の中、途中これでもまだ人をいれるのか?というほど入れていく。
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| エアコン装置がついてないエアコンバス |
辺りはだんだん明るくなってきて、のどかな田園風景を眺めながらバスはクラクションを鳴らし猛スピードで進んで行く。途中、立派な新しい橋を渡った。私はこのような立派な橋をミャンマーではまだ見たことがなく、主人に、
「ミャンマーにもこんな立派な橋があったんやなあ。」
と聞くと主人は
「去年できたそうやで。この橋ができる前はこの川を渡るのに3-4時間は待たなあかんかったそうやわ。便利になったもんよのお。」
と、爺臭いことを言っている。
私達はこの橋を渡ったところで休憩所に立ち寄り、しばしの間そこで手足を伸ばした。体の大きい人にはけっこうこのバスはこたえるかもしれない。早くビーチでゆっくりお酒を飲みたい。と、はやる気持ちを抑えバスは出発した。
バスが走っているとどこからか水がバシャーと掛けられる音と共に、水しぶきが飛んできた。すぐ後ろを振り返ると子供達が洗面器で通る車や人に水を掛けているではないか。
そう、今日は水祭りだったことをすっかり忘れていた。日が昇るにしたがいバスや車が頻繁に通る村では、子供達が待ってましたとばかりに水を掛けに来る。
水をかけようと待ち構えているのを察知すると、開けていた窓を閉めて防御に徹しなければならない。閉めっぱなしにすると風が入ってこないのでむちゃくちゃ暑い。そうこれはエアコン設備がついてないエアコンバスである。この開け閉めが結構疲れる。気を緩めると暑くなったり、水が飛んできたりするので落ち着けない。
私達も掛けられてばかりではおもしろくないので、防御に徹したりまた、ペットボトルの水を通っている人に掛けたりと、ちょっと退屈になってきた風景におさらばをし、楽しんだ。こうして楽しんでいるとあっという間にパテインに到着してしまった。ここの町はかなり大きくバスの停留所に着くまでけっこう水を掛けられてしまった。ヤンゴンでは最終日だけを水祭り参加にしていたので、ひょんな所で地方の水祭りを体験でき得した気分になった。
パテインでは1時間の合流待ちということで町に繰り出そうと思ったが、皆が水を持って構えているのを見て、もうこれ以上は濡れたくないという気持ちもあり近くの喫茶店で時間をつぶした。1時間後またバスに乗り込み、いざフェリー乗り場へ。バスの停留場からフェリー乗り場までは30分位で着く。そこで車ごとフェリーに乗り向こう岸へ。フェリーが来るのを待ったり、車をフェリーに入れたりするのにけっこう時間がかかるものである。ここも橋が出来たら便利になるだろうけど、こうして待つ時間というのも悪くはないと思えてきた。というのは、色んな物を頭に乗せて売っている売り子さん達が見られまた、魅力的な食べ物もあるからだ。その中で特に私達の目に止まったのがエビがそのままの姿でぎっしり詰まった揚げせんべい。とても香ばしくて美味しく食べ応えがあるせんべいである。このせんべいは二種類あり、ぎっしり大きなエビがつまったせんべいが一枚100チャット。小さなエビのせんべいは一枚25チャット。
そうしているうちにバスはフェリーに乗り向こう岸へ渡り進んで行くと、不意をつかれてまた水がバスの中へ入ってきた。バスの天井、人も皆びしょ濡れである。そして誰一人として怒らない。こうして水を掛けながらバスは山道を進んで行くと、通路を挟んだ隣の席の子供達がビニール袋の中に先程おいしそうにほうばっていたアイスクリームを戻しているではないか。揺れるバス。そして当然の如くビニール袋から的を外して床へ落ちていく。混みこみのバスの中なんとも言えない臭いがしばらく続いたが、とうとうフェリー乗り場から1時間20分、すがすがしい潮の香りとともにようやくビーチに着いた。
ビーチには1時半に到着した。8時間の道のりであった。フラフラになりながら砂埃で真っ白になったバッグを担ぎ、いざ今晩泊まるホテルへ行こうとしたが結構距離がある。タクシーやサイカーは走っておらず、何故かビーチで自転車を貸している所があり1時間1台200チャットという高値で貸してもらい自転車走でビーチを走った。何か青春映画のようで海に向かって叫びたくなる。
目的のホテルに着きチェックインをする前に今晩泊まる部屋を見せてもらうことにした。さすがこの時期に一泊3ドルだけあってそれ相応の部屋である。部屋はバンガロータイプでとてもみすぼらしく小さく、周りにある宿泊施設とは比べものにならない。電話で予約を入れた時は、どこもこの時期は値段が高く部屋が埋まってしまっていた。唯一ここだけが安い部屋とテントに空きがあるというので予約をしたが、私達が想像していたイメージとは随分かけ離れていたため他を探すことにした。他も結局は同じで値段がめちゃくちゃ高くそして部屋は皆埋まってしまっている。また足元をみられてか高い値段をふっかけてくるゲストハウスもあった。極めつけに私達はドル紙幣を忘れてしまっていてものすごく気分が落ち込んでしまった。
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| ゲストハウスの群れ |
主人が
「しゃあない、最初に予約してあったホテルへもどるか?」
と言い、戻ってみるともう既にその部屋は埋まってしまっていた。私達は行き場を失い、今夜はどうしようか、と2人肩を落としながら歩いていると、後ろから自転車に乗った青年が声をかけて来た。何でもその青年は近くのゲストハウスで働いているらしく、まだ部屋が後1部屋残っていると言っている。値段もお手頃である。早速その若者に藁をもつかむ思いでついて行き、部屋を見せてもらった。なかなか良い部屋ではないか。ビーチからは離れてはいるが、静かでくつろげる場所である。2人ともすっかり気に入り直ぐチェックインをし、再びここでくつろぐことなくビーチへと向かった。目的は海を見ながらのビールである。喉はからからに渇ききっており、水を得た魚のようにゴクゴクとビールが喉を通っていく。
「プハーこれはたまらん。」
と主人。
「いいねえ、海とビール」
と私。横を見ると、店の店員が砂から何かを掘り出している。よく見ると氷ではないか。なるほど、砂の中で氷を保存させるという昔ながらの手法には感心させられた。
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| 人間の生きる知恵を利用した氷 |
ここで遅い昼食と早目の夕食をとることし、気持ち良い潮風の中、ゲストハウスへ帰った。冷たいシャワーが心地良く、その後は疲れのせいか2人ともすぐ熟睡してしまった。時計の針はまだ8時は回っていなかった。
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