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by 西垣 佐人江
初日を好スタートで送った私は、台所を預かる主婦として次の日、買い物に出かけることにした。といっても、何がどこにあるのか右も左も分からず、地図を見て散策する気力すらない状態なので、主人の仕事が終わり次第二人で買い物に出かけることにした。
我が家から徒歩3分で、チャイナタウンで一番の繁華街に行くことができる。主人はミャンマー歴 4年の、私からすれば大先輩。頼りになるその先輩の後にくっついて、買い物の「いろは」なるものを教えてもらった。
最初にまず、自分の買いたいと思う物を見つけたら「いくら」と値段を聞くこと。ここはスーパーマーケットではなく、道端に屋台なるものを出して商売をしているため値札が付いていない。段ボール、または紙切れ等で値段ぐらい書いて表示してくれてもいいのに。と思うが「そんなこと知ったこっちゃない。無駄なことはしないんだ。」と言われるだろう。
「いくら」と値段を聞いたら、店主は「アセイダ、ネイヤ」とおもりに対して値段を言ってくる。そして、ここで買うのなら、籠(かご)にトマトならトマトを入れていく。そして、その籠を渡し、秤(はかり)でおもりと重さをはかり値段が決まる仕組み。もし値段を聞いた時点で高いようなら、交渉次第で安くなることもある。(たまに、籠から野菜を取り出さず、そのまま、籠ごとはかりにかける人がいるので、注意が必要!)
しかし、ここで問題が生じてしまったのである。大先輩でもある頼れる主人が秤の重さについては何の知識もなかったことである。唯一知っていたのは「あっ、これ知ってる。10チャットやで。」と自信マンマンに無言で店のおばちゃんに10チャットを渡していた。『ネギ一束』である。何とも頼もしい先輩だろうと嫌味を言いたかったが、主人もこうした買い物をするようになったのは、ここ最近。それまでは会社のまかないさんが作ってくれていたので、知らなくて当たり前なのである。
こうして主人とその日、市場を回って思ったのは、だいたいの野菜が小ぶりだということ。そういえば日本人会が出している会報に「タマネギはチューリップの球根か何か区別がつかない、大根もこれでは小根だ」と面白おかしく書いてあったのを思い出し、思わず笑ってしまった。本当にタマネギは球根みたいに小さく、大根も細く小さい。肥料をまともに与えてるのか疑問に思う。トマトも小さく、たまに、本当にたまーに、日本の大きさぐらいのトマトを見かけることがある。きゅうりは大きいが皮は硬く食べられたもんじゃない。切ると種が大きく大部分を占めている。なすびは細長くひょろっとしているのと、米ナスみたいに丸々としていて、色が緑色。まだ食べごろではないのでは?と疑問を起こさせるようなのもある。でも味は美味。そして、オクラは反対に日本の倍の大きさである。
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| チャイナタウンで売られている、ジャガイモ、タマネギや唐辛子 |
驚いたことには、里芋がここミャンマーで採れるということだ。味は日本のものと同じ。
実はここミャンマーでは日本のジネンジョ(山芋の一種)も採れるのである。話では第二次大戦中に日本軍が育てていたらしく、今だに収穫されている。だが、ミャンマー人はほとんど食べないため、街中でもほとんど売られていない。
野菜の種類をだいたい把握したものの、何がなんだかわからないうちに、その日の買い物は終わっていた。次の日、冷蔵庫の扉を開け中が満杯になって、ニタニタして満足している私のところに主人が一枚の紙切れを差し出した。内容はミャンマーの数字と買い物の時最低限使う言葉だった。これを覚えてこれから買い物に行くということらしい。早速、必死で覚え買い物に出かけ実践してみることにした。
片手には先程主人に書いてもらったミャンマーの数字と言葉の紙切れを握り締め、私が言う言葉が通じるのかどうか、緊張しながら震える声で「パラウレ(いくら)」と聞いた。私が言ったことが店主に通じたのか返事が返ってきた。が、さっぱりわからない。はっきり言って何を言っているのかわからない。わからないのは当たり前なのだ。そう、私が覚えたミャンマー語はこちら側の一方的な言葉だけだったのだ。「ショーバオン(安くして下さい。)、ディハ・ペーバー(これください)、ゼェチーレー(値段が高い)」というような言葉である。ここは頼りになる主人にサポートしてもらい、ようやく買い物を済ますことができた。それ以来、買い物に行くのがおっくうになり、主人なしでは買い物に行けなくなってしまった時が当初あった。主人の仕事が終わり次第、疲れているにもかかわらず一緒に付き合ってもらう日が最初の頃何回かあった。今ではもうそんなウブな私は微塵も感じられなくなってしまったが・・・。
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| チャイナタウンで売られている乾物 |
最近では毎日行く店を決めてお得意さんとなり、ちょっと古くなった野菜を無料で頂いたり、安くなる買い物のコツなるものを私なりに発見した。
そのコツなるものは、値段を聞いて高かったりどうしようか迷った時は、一応品物を手に取り迷うマネをする。この時店主は色々と言っているが私にはわからない。そして、すべて理解していたフリをし「やっぱやめるわ」と言い残し去る。
この時やる気のある店主は「ちょっと待ちな。奥さん。これ3つで25チャットはどうだい?」とか「しょうがない。10チャット負けるわ」とか馴染みに店だと強引に値引かせたりとかの手法を取ることができる。
格好にも気を使い外国人だとわからないように、下はロンジー上はヨレヨレのTシャツをだらしなく着る。これでもうミャンマー中国人に変身。そのおかげか場所がチャイナタウンなのかはわからないが、中国語でよく話し掛けられる。最初、買い物をしていてこちらがミャンマー語で「パラウレ(いくら)」と聞いても返ってくるのは、英語での返答ばかりだった。せっかく覚えたミャンマー語が役に立たないのでは、何のためにと思うのと、また、外国人だと思ってか値段を少しばかり吊り上げる人達もいたため、このような格好になったのである。でもたまに買い物に行く途中ジロジロと舐め回すように見られるが、「ちょっと何見てんの?」とガンを飛ばすと、相手はすかさず目をそらす。
でも主人曰く、「ミャンマー人の値段の吊り上げ方はかわいいもんや。多くても10チャットや20チャットぐらいやで。他の国はそうもいかん。えげつないでぇ―――――。まあ、外国人やからしゃあないわ。」とは言うものの、その10チャット、20チャットが「塵も積もれば・・・」ではないが私にとっては、いえ主婦にとっては大切なのである。ケチと言われてもかまわない。主人の言っていることを聞いていると尚更正規料(ミャンマー人料金)で買いたくなるのだ。かといって、私はミャンマー人が買い物をするときのような会話はできない。本当に基本中の基本だけである。だから買い物をしていて向こうが訳のわからないミャンマー語を話してきても分かったふりをして、買い物をするか、もしくは分からなくて不安だったら、前の人が買っていくのをよく観察することである。量を見ていくら渡しておつりはどのくらい。と一瞬にして察知しなければならない。分からない素振を少しでも見せたりすると倍の値段を吹っかけられることもある。私が外国人だとわかっていてもミャンマー人料金で対応してくれる人達もいる。
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| チャイナタウンで売られている野菜 |
あと、買い物に行くといつも思うのが、新鮮な野菜が少ないということ。例えばカリフラワーとかは白ではなく黄色くなって、よく見ると花が咲き始めたりしている。タマネギ、じゃがいももしわくちゃで指で押すとほとんどが、柔らかかったりする。でもたまにだが、新鮮なものも見かけられる。
この間、ず―――っとしゃがんで「あんま良いのないなあ」とオクラとなすびを吟味して選んでいたら、そこの店主が奥から何やらガサ、ゴソと取り出して、私の目の前に何かを差し出した。それは、私がずっと吟味していたナスとオクラだった。その店主いわく「カウンデ、カウンデ(良いよ、良いよ)」と連発している。よく見ると、色、艶、張りからして断然店主の勧める品の方が良いのである。その店主、「ニター」と赤茶色の歯を見せながら、人懐っこく私に勧めるのである。それから私は味をしめ、結構新鮮な野菜をこのようにGETすることができるようになったのである。
とはいっても、肉や魚はまだまだ未知の世界で、新鮮な肉、魚を求めてさまようのである。
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| チャイナタウンで売られている花 |
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